はんぶん、かみさまの世界……「一歳半」のいとしくて、おかしな不思議生活

 

 あかちゃんや、小さい子供を育てるのって大変ですよね。一日中、お世話をしなくちゃならなかったり、夜もあんまり寝られなかったり……でも、育児が終わり、振り返ってみたら、幼い子供との日々は、かけがえのないものだったと、しみじみ思うお母さんも多いのではないでしょうか。

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今回、紹介するのは、画家、イラストレーターのminchi(みんち)さんの絵本「いっさいはん」。1歳半ぐらいの子どものくすっと笑える日常の行動を描かれています。

 

二度とない一瞬の時

 

タイトルがまずいいですね。一歳でも二歳でもなく、いっさいはん。ごろごろころがっているばかりのあかちゃんでもないし、ちょっと分別くさくなりつつある二歳でもない。まさに、このときしかない「一瞬」をとらえた絵本です。愛情いっぱいの目で「いっさいはん」の生態をみごとにとらえています。

 

「ぜんてんしたくて おしりをおされるのを まっているポーズ」には思わず笑いました。私も子供がちいさいころ、してあげたような……。「きらいな たべものが でてきたら ぜったいに くちを あけない」「はこが あったら とりあえず はいる」「かなしいときやいたいときはとにかく おっぱい」と、すばらしい観察眼でとらえています。

 

うちの子たちも小さいころ(1歳半よりは上でしたが、)、親戚や知り合いが集まる場で、どういうわけか、テーブルを巡回し、ビールやジュースの王冠を集めてまわってたなあ、とか思い出しました。お店の家電売り場では、並んだ冷蔵庫をすべてあけて、お魚や、野菜、フルーツなどの食品サンプル(本物そっくり)を点検していました。

 

実用書としても?

 

ちいさなお子さんがいらっしゃるご家庭はもちろん、子供が大きくなってしまったご家庭、これからお子さんを育てるご家庭でもぜひ手に取ってもらいたい絵本です。おむつをかえようとするとあばれだす「いっさいはん」に対し、お母さんは、「ねがえりされないように (いっさいはんのボディを : 引用者注)りょうあしでおさえてる」と、子育てに役立つ「わざ」もさりげなく描かれていて、実用的にも役立ちます(笑)

 

 

作者が画家、イラストレーターさんなのであたりまえかもしれませんが、とにかく絵がかわいい。アニメみたいに「これでどうだ」という感じの人工的なかわいさではなく、じつにしぜんなかわいさです。ちょっと、ぼんやりした「いっさいはん」の表情がなんともいえません。

 

行動パターンもフローでわかりやすく描かれています。

「いしころ、かいがら、きのえだ、どんぐりなどを大量にあつめる」「あつめたものをずらりとならべる」。 スーパーマーケットでは、「すばやくにげる」(かくれんぼしてるつもり)」「みつける」(母が子供を : 引用者注)「みうしなう」(いっさいはんが母親を : 引用者注)「 なく 」(いっさいはんが : 引用者注)というフローが描かれていて、隠れた「いっさいはん」が逆におかあさんを見失い、泣くという情景を見事に描いています。

 

「おふろは あそびば いっさいはん」の項目では、「すごいいきおいで おゆを かけてくる」→「いきおいがつきすぎて じぶんにもはねかえってくる」→「なく」というフローも描かれています。

 

子供が「いっさいはん」のときは、お母さんは本当に大変だと思います。けれど、「いっさいはん」の時期は、ほんとうに一瞬なのだな、としみじみと感じさせる一冊です。「かたづいたものは もとどおり ちらかす」「せんたくもののうえにすわってくる」などは本当はぷんぷんと怒りたい場面なのだと思います。けれど、絵本のなかで、お母さんが怒っている場面は一か所もありません。頭が下がります。

 

かみさまのこども

 

七つまでは神のうち」という言葉があるそうです。七歳までは、半分以上、神や霊といった世界の住人ということです。私もそう感じたことがあります。子供が成長したある時点で、「あ、こっちの世界に来た」と思ったことがあります。それはしつけ、教育や、コミュニケーションがしやすくなった瞬間でもありますが、一方では、「あちらの世界の不思議な行動」が みられなくなるときでもあります。……

ちいさい子がいらっしゃるご家庭は、子育てはたいへんとはおもいますが、「神の子」時代を楽しんでいただければ、と思います。

 

 

著  者:minchi (著, イラスト)

出版社:岩崎書店
出版日:2016年6月11日

 

防ぎようがないこわさ。いまにつながる古代の根源的恐怖--「えほん遠野物語 おいぬさま」

 近頃は、町に熊や、イノシシが出没してときどきニュースになったりしています。けれど、正体はわかっています。ネットや図鑑で調べればもっとよくわかる。けれど、相手の正体がわからず、しかも熊や、イノシシよりはるかに利口で、強かったらどうでしょう。それも大群で、近くに潜んでいる……

 

今回、紹介するのは、「えほん遠野物語 おいぬさま」。

日本の怪談の原点ともいえる柳田国男の「遠野物語」を京極夏彦氏が新たな語りでよみがえらせた絵本シリーズ(第二期)です。遠野の大自然で暮らす狼(といっても不思議な力をもち大きい。「もののけ姫」のモロを思い出しました。)と、狼に怯えながら暮らす人々を描いています。

 

自然の神秘、恐怖 

自然の中で暮らしていた人々が抱いた、山や川や里にひそむ不思議さ、不安、恐怖を見事に描き出しています。現代のホラー作品のように、グロテスクな描写や残酷な場面などはないのですが、それでもこわい……。

 

「山口村の小学生が学校からの帰り、ふと通り道にある岩山を見た」すると、なにかの気配に気づき、「よく見ると、岩山のあちこちにお犬様がうずくまっていた」のです。最近は、通学路などに子供を狙った殺人鬼が潜んでいるようですが、この「お犬様」も相当、こわい。根源的な恐怖を呼び起こす神秘的な存在です。

 

怖くて、お利口 

お犬様は「どれも大きい。生まれたての馬くらいある」のです。わたしたちが思い浮かべるオオカミとはちょっと、いやだいぶんちがうようです。だいたい、「何百というお犬様の群れが押し寄せてきたのだ。」なんてあるでしょうか。草食動物でなく、肉食のこんなこわい生き物が大群をなしているなんて……悪い夢みたい……。この生き物は、また身を隠すのが上手なのです。季節の変化にあわせて、回りの草木とともに毛の色を変える。ジュラシックワールドの、タコの色素をいれた「カムフラージュ可」のモンスター恐竜を思い出しました。

 

絵本というと、かわいいほのぼのとしたものが多いと思いますが、このような「こわいもの」も、魅力的なのではないでしょうか。人間だれしも、恐怖、不安から逃れることはできないと思います。「恐怖、不安」と向き合うことは必要と思います。と、べつにそんなお説教めいたメッセージがこの絵本に込められているわけではないと思いますが、そんなことを考えさせられました。

 

 

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独特の印象

「お犬様のうなり声」、「二百か、三百か、山もどよめくほどの足音」など聴覚的にも効果的な表現がなされています。「おいぬさま」と「さま」づけしているのもうなずけます。自分の対処できないおおきなものに対してはやはり、このように畏敬の念をもつのではないでしょうか……。容易に対応できない、防ぎようがない点が、根源的な恐怖につながっていると思います。

 

馬方たちが、お犬様の大群に対し、回りに火を燃やして防ごうとしても、防げませんでした……。動物が火をこわがるという「お約束」が破られるのはいかにもこわいです…。またある老人は、遠吠えの真似をしてお犬様をからかい、あとをつけられます。家に戻り、しっかり戸締りをしましたが、お犬様は、うなり声をあげながら、一晩中、家の周りをぐるぐると回っています。朝になり、お犬様の姿はなかったのですが……彼が見たものとは?……

 

「お犬様」との表現には、相反するような二つの意味が込められているのかもしれません。

何かこわがる一方ではなく、神秘的な、神々しいものを感じ取り、敬っている。落書きしたからとか、会議であくびしたからとか、視察先でスッポンが死んでたからとかの理由で、やたら国民を殺しまくる、どこかの国の独裁者を「こわがる」のとはまったく違う意味あいなのではないでしょうか……

 

ラストは、何百というお犬様の群れが押し寄せてきて……その恐怖のクライマックスのあと、意外な結末がまっています。迫力のある絵も混沌とした恐怖、不安をうまく表現しています。

自然(の脅威)とは、不安や恐怖とは……一度、じっくり考えたいと思いました。

 

著  者:柳田国男/原作 京極夏彦/文 中野真典/絵

出版社:  汐文社 出版日:2018年4月26日

 

植物と暮らすおしゃれなひとたちの出てくるビジュアル・ムック

「グリーンインテリアのある暮らし Vol.2 ]-はじめてでも無理せず楽しめる 植物の買い方、育て方、飾り方

 

 

タイトルにもあるとおり、植物たちとの「暮らし」に重点が置かれています。観葉植物とインテリアとの調和が美しく、ページの写真をながめているだけで、いやされます。

どの写真も別世界に入り込んだような感じで、「おっ」としてしまいますが、「はじめてでも無理せず、楽しめる」とあるとおり、そんなにべらぼうなコストをかけずとも、グリーンインテリアのあるライフスタイル、暮らしを実現できるようです。

 

とにかく登場されるどの方もおしゃれ。OL、主婦、ブロガーなどグリーンインテリアを楽しんでおられる個人の方々が登場します。プロショップの店内風景も掲載されており、すばらしいですが、一般の方々のご家庭内の写真も豊富で(というかメイン)、写真集としても楽しめる感じです。「鉢とお手入れ道具を選ぼう」など具体的な方法が丁寧に書かれているので、自分でもちょっとがんばれば手が届く感じがしてきます。

 

登場される方々のお気に入りのグリーンショップや、霧吹きやジョーロなどの愛用アイテム、ディスプレイのポイントなどがわかりやすく明示されており、実践的、実用的な内容です。剪定(せんてい)や、水やり、季節ごとの育て方、植物の選び方、寄せ植えの仕方などのほか、アンティークボックスや植物名を書くおしゃれなボードをつくるDIY技術なども丁寧に説明されています。盛りだくさんの内容で、グリーンとの暮らし方を基本から教えてくれます。 

 

実用書としてはもちろんですが、登場される方々の暮らしや人となりが垣間見える点も魅力の一つです。

 

植物に囲まれての生活って、なんかすごいですよね。これだけの数の動物(ペット)だったら大変だけど、植物ならね……さわいだり、うんちしたりもしないし…。

 

ちなみに、梨木果歩さんの小説「家守綺譚」に、庭の百日紅サルスベリ)に恋をされるという話が入っています。「グリーンインテリアのある暮らし」に登場される方々はどうなのでしょう……

 

出版社:コスミック出版

出版日:2018年3月8日

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